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「コンビニ受診」は本当に医療崩壊の原因か?

年に1度の診療報酬改定が4月に迫ってきました。今回は、「救急、産科、小児、外科等の医療の再建」、および「病院勤務医の負担の軽減(医療従事者の増員に努める医療機関への支援)」の2項目が改定の重点課題に挙げられています。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2654

 前者については、救急対応を行う病院への診療報酬をアップすることで対応する方向のようです。

 後者の、「医療崩壊」とも称される、勤務医の過重労働による「逃散」に対する対応策としては、医療補助者(医療事務や看護助手など)加算で対応するとされています。勤務医の負担を軽減する対策は、ぜひとも成し遂げてほしい重点課題です。

 その中身をよく見ると、今回、「救急病院等を受診した軽症患者について、医療保険の自己負担とは別に、患者から全額自費の追加特別料金を徴収することを許可する」という項目が検討されていました。

 「コンビニ受診」と称される軽症救急の増加が病院勤務医を苦しめているから、全額自己負担の追加料金を設定して抑制する、という理屈です。

 1月27日の中医協(中央社会保険医療協議会:厚生労働省の諮問機関)の総会で、今年の改訂における追加特別料金の徴収は、結局、見送られたのですが、コンビニ受診を「悪」とする風潮があることは確かなようです。

 コンビニ受診を減らすために追加料金を設定するというのは、一見もっともらしい理屈ですが、本当に正しいのでしょうか?

コンビニ受診は本当に医療崩壊の原因なのか?

 「日中は忙しいから」「平日は仕事があるから」といった理由によって、軽症の人々が、本来重症者の受け入れを対象とする救急外来で夜間や休日に受診する行為が「コンビニ受診」です。

 救急外来を受診するほとんどの方は、自分が重症かどうか分からないから(重症になって手遅れになるのが怖いから)、軽症でもわざわざ医師の診察を受けるために救急外来を受診するのです。

 確かに9割の軽症患者には、救急対応は必要ないかもしれません。それでも、「仕事が休めずになかなか来られなかった」ために重症化してしまった患者は確かにいます。

 そういう方を見るたびに、コンビニ受診は「翌日に必ず専門医に診てもらってください」と指示するだけでも十分意義があることだと思います。昼間のような十分な対応ができないとはいえ、夜間休日に受診することにより重症化を防げている事例は間違いなく存在するのです。

 それに、そもそもコンビニ受診が減ったところで、救急外来で本当に大変なのは重傷者の対応なので、勤務医負担軽減の根本的対策にはならないのではないか、という疑問もあります。

 また、勤務医が疲弊する一番の原因は、夜間救急外来の仕事を勤め上げた当直明けも、普通に日勤勤務を行う36時間連続勤務です。この36時間連続勤務は、中堅どころの40代医師で月に5~10回程度あるとされています。

 当直時間中に少しでも仮眠を多く取ることができるような体制になれば、それだけでかなり違うかもしれません。でも、当直を時間外労働として認めていない本質的な問題が解消されるわけではありません。

 私には、コンビニ受診そのものが医療崩壊を引き起こしたとは思えないのです。

診療報酬が少なすぎるから病院は夜間休日診療を行わない

 読者の中には、「お医者さんがそんなに大変なのだったら、軽症の時間外救急料金を高くしてコンビニ受診を抑制するのも仕方ない」と思ってくれる人がいるかもしれません。

 でも、私の考えは少し違います。コンビニ受診をどんどん受け入れられる体制にするために、料金を高く設定すべきなのです。

 そもそも、病院がコンビニ受診に対応できなくなったのは、「厚労省が保険診療点数の設定を誤ったから」という側面があります。

 3年前までは、夜間休日に診察した場合、医療機関は通常の1.3倍から2倍の診療報酬を受け取ることができました。でも、2年前の保険点数改正で、これはなくなりました。夜間休日に診察した場合、1人当たり50点(500円、3割負担で150円)加算できる制度に変わったのです。

 しかし、これでは、日曜日に1日診療所を開けて25人診察したところで、1万2500円の加算にしかなりません。医師の給料どころか、看護師さんと医療事務の割り増し賃金すら支払うことができるか怪しいところです。だから、現状では、志の高い一部の診療所しか夜間土日に診療を行っていないのです。

 自民党が進めてきた医療費抑制政策の中では、2倍の報酬維持は難しかったのは分かります。でも、この加算をせめて200点(2000円、3割負担で600円)くらいにしていれば、今よりももっと夜間休日診療を行う診療所が多かったはずです。そうすれば、病院に軽症者が押し寄せて問題になるということはなかったでしょう。

現場を知らない官僚が決めたルール

 厚労省の方針の問題はそれだけではありません。今回、軽症患者からの特別料金の徴収に際して、厚労省は以下の3つの条件を示していました。

 (1)医師または看護師が診察前に軽症であることを確認する、(2)特別料金がかかることを診察前に伝える、(3)特別料金について院内掲示などで告知する、という条件です。

 医師は 「軽症かどうか」を判断するために診察するわけです。現場を見ていない官僚だからこそ、「診察前に確認」などという発想が出てきたのではないでしょうか?

 結局、軽症かどうかも分からないまま、診察前に特別料金の説明をすることになります。

 その説明の手間もさることながら、「具合が悪くて来ているのに軽症扱いするとは何事だ!」とトラブルになったり、料金を聞いた後で診察を受けるのを中止したために重症化する人が出たりと、現場の負担が減るどころか、増える可能性が高いのです。

患者に高額負担させるよりも1次救急の充実こそが必要

 軽症の方の全額自己負担の加算金は、実施されれば、5000円から8000円程度になると予想されています。日本では千円札数枚で医療機関にかかることができるはずなのに、夜間休日になったとたん、それは跳ね上がります。保険自己負担分の検査処置代金を考えると、1万円札1枚どころか1万円札が数枚ないと安心して受診できない状態になってしまうわけです。

 「救急医療には、24時間態勢で人員を揃えて対応するので、それ相応のコストがかかるのだ」ということを、みんなに知ってもらう意味はあるのかもしれません。

 でも、無料とされていた水や安全(セキュリティーサービスなど)にそれ相応のお金を払うのは、今や当たり前です。こんな懲罰的な負担を課してまで、国民に知らしめる必要性が本当にあるのでしょうか?

 そもそも、2次・3次救急病院の勤務医負担を軽くするためにすべきことは、軽症患者に自己負担金を課すことではなく、1次救急(夜間休日診療所など)の充実ではないのでしょうか?

 今回の新制度導入は見送られましたが、もしも導入されていたら、高額負担設定によって受診抑制が起こり、国の医療費支出が減るだけだったのではないかという気がしてなりません。

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