【金曜討論】後期高齢者医療制度 古川俊治氏、原中勝征氏
75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度の見直しが続いている。与党は、所得が特に低い高齢者の窓口負担の限度額引き下げなどの方針を打ち出しているが、長年、自民党を支援してきた地方医師会の政治団体が反旗を翻す動きも。後期高齢者医療制度の理念は正しいとする医師で自民党参院議員、古川俊治氏と撤廃を求める茨城県医師会の原中勝征会長に聞いた。(佐藤好美)
http://sankei.jp.msn.com/life/body/090619/bdy0906190821003-n1.htm
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≪古川俊治氏≫
統一的医療の理念正しい
--制度に反発が強い
「高齢者医療のあるべき姿を考える必要がある。例えば、今までは患者さんをトータルで診る医師がいなかった。私は80歳の胃がん患者さんを診るが、日ごろ、どこでどんな治療を受けているか分からない。胃がんのことは慶応病院に来るが、それ以外は別の病院に行く。薬が二重に出ていたり、相反する作用の薬が出ているかもしれない。誰かが統一的な医療をするのが望ましい。制度にはその理念が入っている。ところが診療報酬削減の話が出たので、医療関係者から反発された。理念はいいが、保険のつけ方がおかしいという議論をしないといけない」
○診療報酬とは別の話
--終末期の治療方針を医師と患者が相談する「終末期相談支援料」は反対が多く、凍結された
「そういう患者さんと話をすると、時間がかかる。ご本人に死を受け入れてもらい、納得いく人生を生きていただく。そのために真実を知ってもらう。医師は一生懸命に話す。必要なことだから…。しかし、これまでは何の評価もなかった。せめてもと保険点数をつけたら、『人を殺すのか』と批判された。高齢者だけにつけることに反対なら、『全世代に広げましょう』といえばいい。若者にも広げ、もっと点数を高くしてもいい。それは診療報酬のつけ方の問題で、制度の話ではない」
--75歳で切ったとの批判には
「会社員の健康保険も退職すれば65歳で切れる。従来の老人保健制度も介護保険も年齢で分けている。『何歳からにするか』の議論はあっていいが、年齢で区切るのはおかしいという話ではない」
--医療費適正化、医療費削減の手始めだとみなされている
「官邸の社会保障国民会議は医療、介護の費用が対GDP比で現在の7・9%から2025年には1・5倍の11・6~11・9%になると試算した。予算委員会で財務大臣に2025年の適正な対GDP比を聞いたら、そのシミュレーションに言及していた。肯定的だった。だからこの制度は適正化にすぐには結び付かない」
○悪い所は少しずつ直す
--高齢者の保険料負担に反対があり、無駄遣いや天下りをなくすのが先との意見もある
「経済が右肩上がりの時代ではない。同世代扶助の考え方を入れ、収入のある方には10円でも保険料を出してもらう。政府の『ムダ・ゼロ会議』が削減可能としたのは3500億円だ。だが、医療費は年33兆円で毎年8000億円以上増える。無駄をなくせば一時的な足しになるかもしれないが、安定財源にはならない。まずは制度を確固とさせた方が医療は安定する。保険の一元化は理想だが、実現が難しい。制度の悪いところを少しずつ直していくのが政治。理念は学者に任せておけばいい」
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老人だけの制度おかしい
--撤廃を求める理由は
「(制度の導入で)高齢者に健康診断の義務が外れ、当初は入院も日数制限された。男性の平均寿命が79歳なのに、残り4年を別制度に移すのは温かみのないやり方だ。『終末期相談支援料』や『後期高齢者診療料』も問題だ」
--「終末期相談支援料」は凍結されたが
「終末期に延命治療をするか、痛みを取って残された命を生きるか、は誰にとっても大切なことだ。老人だけの制度を作るのはおかしい」
●定額化は医療費圧縮
--「後期高齢者診療料」の問題点は
「高齢者の“主病”を診る1人の医師に定額報酬がつく。老人の病気は『1つだけ』のわけがないのに、それを1人が診ろ、という。今は複数の医師にかかれるが、いずれ必ず、1人にしかかかれない制度になる」
--定額化に、医療費圧縮の気配を感じると
「包括化(定額化)して後で下げるのが、政府のやり方だ。老人保健施設の収入も当初は定額の1人1万6000円くらいだったが、今は1万円。65%を人件費に回しても、職員の年収は300万円程度でなり手がない。これ以上辞められたら、医療も介護もだめになる」
--高齢者の保険料負担にも反対か
「保険料のかかる人、かからない人、病院で看取(みと)られる人、家で死ぬ人、いろいろいていい。公平というのは、低所得の人から保険料を取ることではない。農家には年金が少なく、保険料が天引きされない人が多い。しかし、バス路線がなくなり、子供が出ていき、老人ばかり。腰が曲がった人が車もバスもないのに、役場に保険料を届けられるか。例えば年金が8万円以下なら納めずに済む制度でいい。若い時に納めたんだからね」
「入院時の食費負担も問題だ。国は『入院しなくても、食費はかかる』と言うが、農家では畑の物を取って食べれば、お金はかからない。それができないから入院したのに、食費は高負担だ。そういうことを現実の問題として、なぜ政治家は考えてくれないのか」
●必要なのは公務員改革
--では、従来の制度に戻すか
「年齢で区切る制度には反対だ。理想は、高齢になっても若いときと同じ保険でみること。それが難しければ一元化だが、まずは医療費の対GDP比を先進国並みに上げること。もっとも必要なのは公務員改革。官僚が“渡り”で4億円ももらい、国民に使う金がないのか。無駄をなくした後に保険料や税金といえば、皆さん納得する。死ぬときにいじめられたとか、苦痛を感じながら死んでいくなら、病院の価値はない」
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【プロフィル】古川俊治
ふるかわ・としはる 参院議員。医師。弁護士。慶応義塾大学法科大学院教授、同大医学部外科教授。昭和38年埼玉県生まれ。46歳。私立開成高、慶応義塾大学医学部卒。病院勤務の傍ら同大文学部、法学部を卒業。オックスフォード大学大学院修了(MBA)。
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【プロフィル】原中勝征
はらなか・かつゆき 茨城県医師会会長。医師。昭和15年福島県生まれ。69歳。福島県立双葉高、日本大学医学部卒。米国スローンケタリング癌研究所客員研究員、東京大学助教授などを歴任。医療法人、社会福祉法人理事長として病院、老人保健施設、特別養護老人ホームなどを経営。
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