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どうなる2009年の企業IT投資――現場報告からその行方を探る

企業ユーザー2社のIT責任者が語るIT投資の現実と展望

(2008年12月11日)

http://www.computerworld.jp/topics/econo/129469.html

 2009年の企業IT支出を巡っては、さまざまな憶測が業界を飛び交っている。実際のところ現場の実態はどうなのか。Computerworld米国版では、その実情を探るべく米国とドイツのそれぞれに本社を置く企業ITユーザー2社のIT責任者にインタビューを試みた。前者は医療機関にスタッフの派遣および管理サービスを提供する企業、後者は自動車業界向けにエンジニアリング・サービスを提供する企業である。

Eric Lai

Computerworld米国版

“痛み”を最小限に抑え予算削減を試みる

ヘルスケア・プロバイダー「Schumacher Group」

 米国ルイジアナ州ラファイエットのSchumacher Groupは、病院の救急救命室の医療スタッフ派遣および管理サービスを提供する、創立14年、従業員数750人のヘルスケア・サービス・プロバイダーである。

 ダグラス・メネフィー(Douglas Menefee)氏は3年前に同社のCIOに就任、社内情報システム全体をアップグレード/リプレースするプロジェクトの全権をゆだねられた。しかし、米国の経済危機の深刻化が伝えられるようになった数カ月前、経営幹部陣から2009年のIT予算を半分に縮小したいと告げられた。

Schumacher GroupのCIO、ダグラス・メネフィー氏

 プロジェクトを失敗に終わらせたくないと考えた同氏は、IT予算の削減を最小限にとどめるために、ねばり強く交渉を行った。その結果、ある妥協点を導き出すことに成功した。それは、「予算削減を20%にとどめる代わりに、当初計画したとおりの成果を出す」というものだった。

 その目標を達成するべく、メネフィー氏は現行の全プロジェクトの見直しに着手した。まずは短期ROI(投資効果)を追求する小規模プロジェクトは中止し、規模の大きいプロジェクトも縮小もしくは延期することにした。例えば、同社で採用しているPeopleSoftの財務ソフトウェアのアップグレード計画は現在(12月4日時点)も見合わせたままだ。

 縮小の対象としたのは、とりわけ高額なコンサルティングや統合作業を要するプロジェクトである。同社では「仕事をコンサルタントに100%丸投げするのではなく、それを50~70%に抑えることにした」という。

 メネフィー氏は2008年にすでに複数のサーバを購入していることから、2009年は(使用期限の切れる)Cisco Systemsのネットワーク機器をリプレースする以外、データセンター関連のハードウェアの購入は一切行わない方針だ。

 その一方で、仮想化技術の採用を拡大し、現在稼働している140台のサーバの効率化を図る。また、ストレージに関しては、「2009年中に新たなSAN(Storage Area Networks)を購入しないで済む方法を模索する」としている。

メネフィー氏によると、ベンダーの多くは今のところ好調な業績を維持していると説明しているという。「(企業ユーザー側の)意思決定プロセスは2~3カ月延びているものの、取り引き自体はまだ順調であり、ベンダー側は契約に際して強気の姿勢を崩していないようだ」(同氏)

 幸いなことに、Schumacherが現在交わしているIT契約の更新はまだ少し先であり、そのころにはベンダーも柔軟かつ現実的な姿勢で取り引きに応じるはずだ、とメネフィー氏は期待を込めて語る。

 同氏はさらに、Microsoftと結んでいる契約を見直し、「Enterprise Agreement」から「Select」ライセンスへと引き下げるかどうかも検討しているという。Enterprise Agreementとは、企業ユーザーにほぼすべての機能を提供するMicrosoftの最も高額なプレミアム・ライセンスである。これに対し、より低料金で利用要件を選択できるSelectライセンスは、限定的な機能しか利用しないユーザーにはコスト面で有効だ。

 Schumacherは現在、社内の全デスクトップをはじめ、SQL Server Data Warehouseを利用した7TBの請求書発行システムなど多くのサーバでMicrosoftのソフトウェアを利用しており、3年前にライセンス契約をSelectからEnterprise Agreementへとアップグレードした。しかしメネフィー氏は、ライセンス体系と製品リリースの時期を頻繁に変更するMicrosoftの慣行に言及しながら、ライセンス供与を受ける側も契約を頻繁に見直す必要があると指摘している。

 Schumacherは、Microsoftのほかに、Salesforce.comもメイン・ベンダーとして位置づけ、サービスを採用している。

 「Salesforceからは多大なROIを得ている。当社にはオンプレミス(自社運用型)ERPシステムがなく、効果がある限りSalesforce.comを使い続けるつもりだ」(メネフィー氏)

 実際、Schumacherが使用しているソフトウェアの半分はサービスとして提供されている。このため、同社の契約ベンダーには小さな新興企業が多い。メネフィー氏は(不景気の影響で)これらベンダーのサポートが中断されることがないよう、特に各ベンダーへの「外部投資が撤退する可能性がないかどうか」を探りながら、各社の「底深さと財政的安定性」を精査している。

 かつてドットコム企業に勤務し、ドットコム・バブルとその崩壊を間近で経験したメネフィー氏は、当時のような惨劇は繰り返されないと信じているという。「この業界はドットコム・バブル時代に多くを学んだ」(同氏)

 こうした対策によって、Schumacherでは無駄なステップを踏まずに困難を切り抜けられるはずだ、と同氏は断言する。例えば、オンプレミス型ソフトウェアのメンテナンスはこれまでどおり継続し、3年ごとのデスクトップ・ハードウェアの刷新も予定どおり行うという。

 一方、現在限定的に利用しているオープンソース・ソフトウェアを増やす計画もない。同氏は「(オープンソースの)ブームに乗ったことはない」と話している。ただし「Google Apps」については、Schumacherと契約している2,400人の医師を容易に結ぶ手段として真剣に導入を検討したい考えだ。

 同社は、IT部門のレイオフは予定しておらず、逆に20%増員して現在の41人から50人にする計画だ。ただし、増員の大半はインドでの雇用になるという。ちなみに、同社は現在でも、ITスタッフのうち5人をインドで雇用している。

ビッグ3の経営危機をよそにIT投資計画を維持

自動車設計支援サービス企業「Tecosim GmbH」

 ユルゲン・ベイス(Juergen Veith)氏は、ドイツのラッセルハイムに本拠を置く自動車エンジニアリング・サービス・サプライヤーのTecosim GmbHでマネージング・ディレクターを務めている。

 Tecosimは年商3,000万ドルの株式公開企業で、米国など4カ国に従業員250人を抱えている。バイス氏はIT支出を含め、Tecosimが手がけるビジネスのすべての分野を直接監督している。

Tecosim GmbHのマネージング・ディレクター、ユルゲン・ベイス氏

 同社の顧客のほとんどは、経営危機が広く報じられている米国ミシガン州デトロイトの自動車メーカーだ。しかし驚くことに、Tecosimにはその影響は及んでおらず、今後も影響を受けることはないとバイス氏は断言する。

 「われわれの相手は主に自動車メーカーのR&D部門だ。自動車メーカーは将来に向けて開発投資を続ける必要があり、この分野のビジネスは(経済危機の)影響を受けにくい」(同氏)

 TecosimはIT支出を削減しないとバイス氏が宣言するもう1つの理由は、契約しているITベンダーから期待どおりの効果を享受していることにある。

 同社がソフトウェアに費やす年間約200万ドルのコストのほとんどは、米国Altair Engineeringとそのパートナー企業に支払うハイエンドCADおよびエンジニアリング・アプリケーションのレンタル料金だ。

 Tecosimは、決められた利用時間のトークンを購入してソフトウェアを利用している。バイス氏は、柔軟性に富み、全体的なコスト構造が優れているこのシステムを「素晴らしい」と高く評価しており、その優位性をデスクトップの「シェアウェア」になぞらえて説明する。同氏は「Microsoftがこうしたシステムを発明してくれたらうれしいのだが」と皮肉交じりに語る。

 バイス氏によると、Tecosimは、Altairのほかに、Microsoftを含む代表的な複数のベンダーと契約しているが、今のところ事業が順調であるため、2009年初めの契約更新時にもベンダー各社に対して今以上に厳しい要求を提示するつもりはないという。「状況が安定しているときにわざわざ波風を立てる必要はない」と同氏は述べている。

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