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空きベッド確保に悲鳴

県立医科大・救命救急センター 2次医療崩壊で急患続々「たらい回しすぐそこ」

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/wakayama/news/20080601-OYT8T00002.htm

総出で救急患者の治療に当たる救命救急センターの医師ら(和歌山市紀三井寺の県立医科大で) 県立医科大1階にある救急集中治療部・救命救急センター(和歌山市紀三井寺)。毎日、多くの命をつなぎとめる救急外来(ER)で、20歳代の男性医師が伏し目がちに、この冬の出来事を振り返った。

 その日は、夕方から重症患者の搬送が相次いでいた。「これ以上運ばれてきたら、もう対応できない」。そんな予感が頭をよぎった。深夜、すべてのベッドが埋まった。それでも、救急隊員からの搬送要請の声は鳴りやまなかった。

 「心停止の男性患者1名」--。緊迫した声に、医師は「頼りにされている」と感じたものの、「すいません」と声を振り絞るしかなかった。もし、ほかに受け入れ先が見つからなかったら、と考えると背筋が寒くなった。「和歌山でも、『たらい回し』はすぐそこまで来ています。もう少し病床数が増やせれば……」

   □■ 搬送患者の増加に、病床の確保が追いつかない。救急車がタクシー代わりに使われることもあり、「あの病院は嫌だ、県立医大に行ってくれ」と救急隊員に命令する患者もいるという。岩崎安博・同センターER医長は「救急患者を受ける個人病院が減り、(軽度の)1次医療から(高度な技術が必要な)3次まで全部を診ることになるんです」と現状を説明する。

 同センターに運び込まれる患者は、1か月に約600人。これに対して、割り当てられたベッドは26床だけだ。一般病棟から17床を借り受けているが、十分とは言えない。医師らは毎朝、一般病棟や他病院へ、山場を越えた患者を移し、最低でも5床の空きベッドを確保するのに腐心する。

   □■ なぜ、ここまで病床が不足するのか。現場の医師の意見は一致した。「これまで救急医療を支えてきた2次医療が崩壊したから」と。救急患者を受け入れる民間病院は、和歌山市内でも少なくなった。ある民間病院の医師は「24時間態勢は人手もコストもかかり過ぎる」と打ち明ける。医療訴訟などのリスクも高まっており、「専門外だから」と、県立医科大や日赤和歌山医療センター(和歌山市)に押しつけるケースも多いという。

 「断らない医療」を掲げ、医師確保に力を入れる篠?正博・救命救急センター長は「マンパワーがあっても、病床が足りなければ断らざるを得ない。ここ1、2年は特に深刻。病床を増やし、受け入れ態勢を整えないと大変なことになる」と訴える。

 平日の午後、ERで働く男性研修医の表情が少し緩んだ。「午前中に3時間ほど(救急搬送が)なかったんです。こんなのは奇跡ですね」。その直後、ドクターヘリの到着を告げる院内放送が流れ、再び緊迫した空気に包まれた。「ベッドさえあれば、無限に治療はできます」。壮絶な現場で、使命感にあふれた医師の言葉がせめてもの救いだった。

(上村真也)

(2008年6月1日 読売新聞)

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