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医療をまもる 丹波の『革命』(上) 市民の力で小児科存続

兵庫県の山間部にある人口七万人の丹波市が、全国の医療関係者の注目を集めている。休止の危機に陥っていた小児科を存続させた若いお母さんたちの「県立柏原(かいばら)病院小児科を守る会」、医療関係者と住民による「丹波地域医療再生ネットワーク」といった元気な活動が展開されているからだ。医療を守ることは、住民の暮らしを守ること。丹波の取り組みを、上下二回に分けて紹介する。 (安藤明夫)

http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2008052902013322.html

 昨年四月、同市のローカル紙・丹波新聞が若いお母さんたちを集め、小児科医療を考える座談会を開いた。県立柏原病院の小児科をよく利用するお母さんが、こう訴えた。

 「和久先生、休む間もなく診察してはって、疲れ果ててる。ずっといてほしいけれど『続けて!』ってよう言われへん」

 小児科を支えてきた和久祥三医長(41)が、改善されない勤務医不足の現状に絶望し「五月いっぱいで退職したい」と辞意を表明したことが、この座談会の背景にあった。

 同科は、実質的な常勤医が和久医長一人の状態に追い込まれ、時間外労働は月百時間以上に。和久医長が退職すれば、小児科の存続は不可能。産婦人科も「新生児を診る小児科の存続危機の中では、お産の安全を保証できない」として、この年の十二月以降の分娩(ぶんべん)予約の受け付け休止を決めた。

 座談会で、お母さんたちが真剣に話し合った。

 「そんな状態になってるなんて、何も知らなかった。『二人目、三人目産めへんね。困ったね』って話すうち、私たちでできることやろうって」

 守る会代表の丹生裕子さん(37)は、設立の経緯をこう振り返る。

 座談会を受け、参加者や友人ら十一人が四月末から、小児科医招聘(しょうへい)を求める署名活動を始めた。

 お母さん仲間、地域の会社、保育園、幼稚園、自治会などに声をかけ、五万五千以上の署名が集まった。要望だけでなく「医師が過重労働に陥らないように、安易な“コンビニ受診”は慎む」と、住民啓発の意味も込めた。

 しかし、署名を受け取った兵庫県の担当者は「どこも大変なので柏原病院だけを特別扱いはできません」。

 それならばと、守る会の活動は住民啓発が主体となった。▽コンビニ受診を控えよう▽かかりつけ医を持とう▽お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう-の三項目をキャッチフレーズにした。

 感謝の言葉の寄せ書きを病院に届けたり、ステッカーも作製。病気の重大性を見分けるための小児救急の冊子もつくった。

 その成果は、データにくっきりと表れた。

 昨年四月から十二月までの小児科の時間外受診者は四百十人で、前年同期の44%に。受診者のうちの入院率は逆に9%から18%に上がり、軽症の受診者が減ったことを裏付けた。

 和久さんは「この盛り上がりを見届けたいから」と笑いつつ、今も診療に励んでいる。

 「物理的な忙しさだけでなく、患者さんやご家族が医療の現状を理解してくれるようになって、とげとげしい言葉が減り、私たちや看護師のストレスもぐっと減りました」

 小児科存続のめどが立ったとして、産婦人科の分娩予約も再開。ことし四月からは、小児科医が二人増えた。守る会の運動を知り「丹波で働いてみたい」と、志願してきた。神戸大小児科医局や県立こども病院の小児科医たちも、運動に共鳴し、専門外来や当直を手伝ってくれるようになった。

 柏原病院の酒井国安院長(小児科医)は、同病院ホームページで、守る会への熱い感謝の言葉を伝えている。

 「あなた方の市民運動は間違いなく『革命』なのです。たとえ、この地域が医療崩壊の焼け跡になったとしても(考えたくはありませんが)、その功績は必ずや将来の地域医療再生の道標となることを確信しています」

    ×  ×

 「医療をまもる」では、医療の危機に向かい合い、奮闘する人たちの姿を通して、医療の明日を考えます。

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