ねじれの先に:奈良・現場から 後期高齢者医療制度/下 /奈良
◇現役世代も負担増--健保の保険料アップ、支援金での運営限界も
後期高齢者医療制度の影響は75歳以上の高齢者だけにとどまらない。高齢者医療に回される「支援金」などの拠出が増大し、現役世代が加入する医療保険でも保険料を上げなければならないところが出てきているからだ。
http://mainichi.jp/area/nara/news/20080524ddlk29010447000c.html
後期高齢者医療制度は、高齢者自身の保険料1割、各医療保険が支出する支援金4割、公費5割で運営される。旧老人保健制度でも、各医療保険は自らの75歳以上の医療費などに準じて拠出金を払っていたが、新制度では扶養家族も含めた加入者数に応じて支援額が決まる。大企業の健康保険組合など、75歳以上が少なく扶養家族の多かった医療保健は負担が膨らむ。
五條市の今西多香一さん(53)が勤務する大手通信会社の健保組合も10月から保険料率を上げる。今西さんの場合、月約750円アップする計算だ。
健保組合の全国組織「健康保険組合連合会」の調査では、回答した1285組合中141組合が08年度0・1%を上回る保険料率を上乗せする。連合会は「より小幅な改定を含めれば値上げ組合数は倍以上」とみる。支援金に加え、同時創設された65~74歳の前期高齢者医療制度への「納付金」負担も大きいという。
今西さんは「今の現役世代は一番しんどいのでは。団塊世代が年を取り高齢者が増える一方、現役世代が減る。人口構成にひずみがあるのに放っておいた政府の責任」と憤る。定率減税廃止、保険料増とサラリーマンの家計を直撃する制度改正が立て続けに起きた。「税金や保険料を上げる前に、無駄遣いをやめ、もうかっている人や企業が応分負担する公平な税制にするべきでは」
県市町村職員共済組合も、掛金率を昨年度の4・14%から約4・76%に改めた。昨年度の拠出は約30億7800万円だったが、08年度は3億円弱の増加。
組合員で県中部の町役場に勤める男性(50)の4月の掛け金は1万7482円。3月までより約2000円上がった。「昇給幅が小さくなり、給料は上がらなくても掛け金だけ取られる。厳しい」
財政難のこの町では、職員本給は5%カットされている。妻と大学1年の長男、高校3年の次男、母(75)の5人家族。大学の学費などは、奨学金を借り、教育ローンを組み、退職金で埋めるつもりという。「消費税を福祉の目的税にするとか、診療報酬の改定とかもっとできることがあるんじゃないか」
75歳以上が多く抜けた中小企業の政府管掌健康保険や自営業者らが加入する国民健康保険では、一般的に支援金は減るとされる。ところが県内の国保では今年度、保険料(税)率引き上げが相次いでいる。
県商工団体連合会(奈商連)によると、年収200万円、3人家族、資産なし世帯のモデルで、値上げとなるは39市町村のうち20以上。うち10以上が、年間3万円を超える負担増という。
引き上げた自治体の一つ、香芝市内で衣料品店を営む吉川愛子さん(60)は「(無保険で)全額負担になるとお医者さんにもかかれないから、不満でも払わないわけにはいかない。国民は弱い立場」とこぼす。
引き上げの背景には納付率の高い75歳以上の脱退で、全体の収納率の下落が予想されることもあるようだ。さらに奈商連の東信治事務局長は「この機会に財政の健全化を、との思惑も見え隠れする。便乗がないか検証も必要」と指摘する。
国立社会保障・人口問題研究所の推計(06年12月)では、人口に占める75歳以上の割合は、06年の9・5%から2055年には26・5%に急増する。
県後期高齢者医療広域連合は「医療費が膨らみ続け、高齢者の保険料や支援金での運営は難しくなる」と危惧(きぐ)する。【高橋恵子、中村敦茂】
毎日新聞 2008年5月24日 地方版
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