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医療費が足りない/3 激務の勤務医

 ◇止まらぬ病院離れ
 長時間勤務が続き、麻酔薬の種類や量を間違えそうな危うい場面が重なった。「このままでは、いつか事故を起こす」

http://mainichi.jp/select/science/crisis/news/20080417ddm002040060000c.html

 03年春、仙台市の麻酔科医、皆瀬(かいせ)敦さん(51)は、勤務先の国立仙台病院(現国立病院機構仙台医療センター)を退職しようと決めた。

 超過勤務は月100時間以上。深夜に及ぶ長時間の手術の後、翌日は通常の勤務をこなした。「常にイライラし、研修医に当たったりした」と振り返る。超過勤務手当の不十分さも不満だった。

 所属する東北大医学部麻酔科から慰留されたが、同科も人を派遣する余裕はない。04年春に退職し、フリーの麻酔科医として働く道を選んだ。現在は主に、週3日は仙台医療センター、2日は東北大で働く。拘束時間と精神的な負担は減り、収入は3倍近くになった。趣味のスノーボードも楽しめる。皆瀬さんは「センターが私に払う人件費は2倍ぐらいになったはず。せめて2割増しぐらいにしてもらえれば、辞めずに頑張れた」と話す。

 東北大病院では16の手術室の大半が常に稼働し、日に3~5件程度の緊急手術が入る。全身麻酔手術が06年度には、約10年前の1・5倍の約6400件になった。だが、麻酔科所属の医師は、関連病院へ派遣中の医師も含め、かつての約70人から約50人に減少。辞めるのは30代の中堅医師が多く、大きな痛手だ。フリーの麻酔科医や、関連病院からの非常勤医師の応援なしには手術をこなせない。

 麻酔科長の黒澤伸教授(47)は「最近は、地域病院の勤務を選んだ医師が『物足りない』と大学病院に戻るケースもある。あと3年ぐらい頑張れば、少しは楽になるのではないか」と希望をつなぐ。

   ■   ■

 「収入がもっと多かったら開業はしなかった」。兵庫県西宮市の病院に勤める外科系の男性医師(49)は退職した同僚の中堅医師から、こんな言葉を聞いた。男性医師は退職の影響で仕事が増えたが、「気持ちは分かる。子どもが成長し、教育に金がかかる時期だ」と話す。

 男性医師は外来を週3回担当し、年に延べ約4200人を診察する。診療報酬上は約3000万円を稼ぐ計算だ。しかし、年収は月5回の他の病院でのアルバイトを含めても約1500万円。「パートの看護師を雇って開業すれば……」と考えてもおかしくない。

 男性医師は「ほとんどの勤務医が、命を扱う責任の重さや、忙しさに見合った給料でないと感じている。問題は、働き盛りの中堅医師が勤務医を辞めていくことだ。若い人に教える教師役がいなくなる」と訴える。

 大学病院にいたころは本来の業務に加え、他の病院で週3回アルバイトし、手術の手伝いにも行った。大学の給料が年に約700万円だったのに対し、アルバイト収入は計約1000万円に達した。「正常な姿とは思わないが、アルバイトをしなければ自分の思うような収入は得られない」と話す。

 低医療費政策が続く限り、勤務医の待遇改善は困難だ。勤務医の病院離れは止まらず、各地で地域医療の崩壊が進む。=つづく

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 ご意見、ご感想をお寄せください。ファクス(03・3212・0635)、Eメール t.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp 〒100-8051 毎日新聞社会部「医療クライシス」係。

毎日新聞 2008年4月17日 東京朝刊

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