スポンサードリンク
スポンサードリンク

TOP >  医療崩壊関連記事

来るべきWeb3.0の世界

  前回、情報流通プラットフォームがブラックボックスになってしまっている現状を書いた。「情報の粘着性」仮説においては、情報が存在している場所こそがイノベーションの発生源となる。だがWeb2.0の世界では、情報の流通を司っているのはアマゾンやグーグルなどのプラットフォーム企業であり、これら企業に情報が集中する。従ってイノベーションは、プラットフォームに集中していくということになる。

http://wiredvision.jp/blog/sasaki/200802/200802261000.html

 Web2.0の世界においては消費者は自分が何を欲しているのかはもちろん知っているが、他の消費者が何を求めているのかは知らない。メーカーは、アマゾンやグーグルなどのプラットフォーマーに遮られて、直接消費者と対話することができない。だからやはりニーズの情報は持つことができない。すべての消費者がすべてのメーカーの商品をどう購入しているのかという情報を知っている、流通部分を握っているプラットフォーム企業こそが、すべての情報を握り、自動的にイノベーションも生み出していくというわけだ。

 このブラックボックスを破壊し、プラットフォームにおける情報流通を、可視化できたらどうなるのだろうか? そこで情報の粘着性は弱まり、イノベーションが起きる場所は移動可能になるのだろうか? 実際のところ、最近言われるようになったソーシャルメディアやパーソナライゼーションなどといった試みは、ウィキノミクス的観点から言えば、この部分の情報流通を消費者に可視化させてしまおうという企てにほかならない。

 ソーシャルメディアとパーソナライゼーションは、単語だけを取り出して見てみると、別の方向の話のようにも見える。ソーシャルメディアはご存じのように、人間同士のつながり(最近はこれをソーシャルグラフと呼んでいる)をベースにしてさまざまな情報を流通させるという仕組みだ。そしてパーソナライゼーションは、これまで不特定多数向けに提供されていた最大公約数的な情報を、ひとりのユーザーの属性や行動履歴をもとにしてそのユーザーに最適なかたちに集約させるという仕組みである。そうやって説明すると方向はたしかに逆なのだが、しかし一方で、情報の流通を可視化させるため、情報アクセスのコンテキスト(背景)を絞り込んでいくという意味においては同じ方向性でとらえることも可能だ。

 もう少し別の切り口で説明してみよう。人が情報にアクセスするとき、その情報を求めるという行動のコンテキストはどこに求められるのだろうか。たとえばある日私が、「医療崩壊」というキーワードについて情報を探したとする。なぜ私は、医療崩壊について調べようと思ったのか。

(1)テレビや新聞で、医療崩壊の現状について報道され、それで興味を持った。
(2)同じ会社の同僚が、医療崩壊について「これはわれわれの仕事にも関係するかもしれないから、きちんと情報を押さえておいた方がいいんじゃないかな」と言ったので、調べておくことにした。
(3)私の妻が夕食の席で「最近は医療崩壊で、産婦人科にかかることができなくなったりしているらしい」と話した。それで気になって調べた。
(4)以前からこの問題については興味を持っており、継続して調べている。
(5)そもそも私は医師で、医療崩壊問題については知っておかなければならない。

 この中で(1)は、マスメディアからの影響である。そして(2)と(3)は、マスメディアほど圏域は大きくないけれども、自分の周囲にいる人たちからの影響によって情報を調べようとした場合。(4)は私の行動履歴に基づいた情報アクセスであり、(5)は私の属性に基づいた情報アクセスである。これらをもう少し整理すると、以下のような並びになる。

公共圏(マスメディア) 最大公約数的情報
仲間圏(ソーシャル) 同じ情報共有圏域に存在する人たちと共有される情報
個人圏(パーソナライゼーション) 行動履歴、属性に基づいた的確な情報

 この三つの圏域は、多重円となってユーザーの周りを取り巻いている。「仲間圏」は正確に言えば、必ずしもお互いに顔を見知っている友人だけを指すとは限らない。たとえばアマゾンのオンラインストアでは、どこの誰かはわからないけれども、しかし私と購買行動の似ている人たちの購買履歴と私の購買履歴を協調フィルタリングという技術によって比較し、「この商品を購入した人は、こんな商品も購入しています」というレコメンデーションを行っている。これも仲間圏というコンテキストに基づいた情報アクセスのひとつだ。

 このような多重円をイメージしていただければ、情報アクセスのコンテキストという切り口においては、パーソナライゼーションとソーシャルメディアは同じ方向性、同じ土俵で語られるべきアーキテクチャであるというのが理解できたのではないかと思う。

 そしてこれら多重円化した情報アクセスコンテキストは、情報の流通をユーザーに対して可視化させることにもなる。なぜならこのようにして情報アクセスのコンテキストを確認するという作業は、すなわち分散していた情報をユーザー(私)のもとに再集約させる仕組みでもあり、つまりはWeb2.0の世界でフラット化し拡散していた情報を、再びシステムによって拾い集めて、私のもとに結集させることになるからだ。この情報の再集約の仕組みを、Web3.0という言葉で説明している人もいる。たとえばこのウェブ3.0の姿をつかめ:何がキモになるのか?というCNETの記事などがそうだ。

 いずれにせよ、再集約された情報は、少なくとも私にとってはすべてが可視化され、透明になる。これまでプラットフォーム企業だけが握っていたニーズ情報が、私の圏域にも流れ込んでくるわけだ。もちろん他人のニーズ情報は全面的には私のところにはやってこないけれども、しかし先の多重円モデルで言えば、私の外側のすぐ近いところにいるソーシャルネット(たとえば同じ会社のプロジェクトチームの同僚、家族、恋人などの狭い人間関係)のニーズ情報は、私のところにやってくる。多重円の中心に近い部分はある程度透明化され、私の圏域において可視化されることになるのだ。

 Web2.0で情報がどんどん拡散していった世界では、その拡散していく情報の場を司っていたプラットフォーム企業が、情報を握っていた。情報の粘着性仮説で言えば、これらプラットフォーム企業のところに情報はまつわりついていたのである。しかし来るべきWeb3.0の世界では、情報はユーザーに向かって再度集約を開始し、ユーザーのところにかなりの量の情報が集まってくる。となってくると、この世界において情報を握るのは、ユーザー個人ということになるかもしれない。情報の粘着性仮説を再び使わせてもらえば、すなわちこのユーザー個人という場にニーズ情報は集約され、この個人がイノベーションの発生源になるかもしれないのだ。

 私は先日、書籍の取材でニフティの佐藤寛次郎さんに会った。プロフィールサービスの「アバウトミー」を担当している彼は、こんな話をしてくれた。

 「今後の可能性としては、ブログのネットワーク化っていうのがすごく個人的にも興味があります。そこが昔のニフティサーブのパブリックなフォーラム掲示板とは異なっていて、同じセンスや同じ感性、同じにおいを持つ人同士がつながることのできる場というのは、ひょっとするとイコールリアルなのかもしれません。そのリアルをつなげるのは、企業とコンシューマーをつなぐことのできるニフティのような会社かもしれない。もしニフティがそういう役割を担えれば、ネットワーク化ができると思うんです。すると、企業が一般のコンシューマーのフィードバックを得るために、ニフティに何らかの相談をしてくるっていうイメージになる。そういうことは近い将来起きてくるんじゃないかと思います」

 ソーシャルメディアが、イノベーションの発生源となり、そうしてこの部分でのイノベーションを運営企業を経由させることによって具現化させるというプロセスが、ここでは語られている。次回はこのプロセスの部分について、もう少し詳しく論考していきたい。

スポンサードリンク

関連エントリー

レセプトオンライン請求完全義務化に風穴   レセプトのオンライン請求義務化で"官製"医療崩壊を招く?   GMとクライスラー再建への道は遠く、険しい 破綻とりあえず回避したものの   病院が自院口コミを、自院HPに簡単に貼り付け~ブログパーツ式の「口コミ流通促進パーツ」を無償配布   【IT経済 基礎講座】篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー   ジンバブエでデモ、機動隊が鎮圧 コレラ死者は560人超   6人のレジデントが語る6つの診療科の魅力   医療崩壊待ったなし   医療、介護崩壊阻止訴えパレード   医療費抑制路線からの転換で講演会   医療崩壊阻止をテーマに公開勉強会-みんなの歯科ネット   診療関連死や医療崩壊テーマに研修会   議論百出の死因究明の公開討論会   ER型救急は「ペペロンチーノ」(下)   医療・介護の再生をテーマにシンポ-民医連   後期高齢者診療料についての日医の見解とアクション   ミャンマー:サイクロン被災者への緊急援助   「モンスターペイシェント」が県内の医療現場でも… /奈良   時代の要請に応えるジェネラリストを育てる   愛知の病院、7割が被害 暴言・暴力振るう「モンスター患者」   空きベッド確保に悲鳴   第三次試案の拙速な法案化は避けるべき-全国済生会病院長会   医療をまもる 丹波の『革命』(上) 市民の力で小児科存続   夕張市立診療所の村上医師が単行本 「地域医療の意識改革を」   即時撤廃求めアピール   「崩壊の原因、教育も医療も同じ」   【正論】新渡戸文化学園短期大学学長・中原英臣 高齢者と現役の共生こそ重要   緊急論考「小さな政府」が亡ぼす日本の医療   第三次試案にパブコメ647件-死因究明制度   死因究明制度「内容に問題」―医療系学会   医療関係者が深刻な危機を訴える上映会 「シッコ」を見ながら考えた   WRAPUP2: 中国・四川大地震、四川省だけで死者約1万人   社会保障費の抑制 もう限界ではないのか   ミャンマー:サイクロン緊急援助 MSF、援助物資の到着とともに緊急援助を強化 日本からも3名が今日出発   「刑事責任追及に違和感」   ニート、ネット難民が高齢化社会に落とす影   小児救急   「『5分ルール』は医療崩壊を加速」   世界一の医療を守るには   チェルノブイリ支援の募金、18年で終了に   緊急論考「小さな政府」が亡ぼす日本の医療(7)   生活への影響5000件超 暫定税率失効で知事会調査   患者参加型医療の実現をめざして 第6回日本予防医学リスクマネージメント学会開催   『まちの病院がなくなる!?地域医療の崩壊と再生』を読んで   『ノー・フォールト』岡井崇著   ドクターヘリ/全国を網羅する体制を   診療報酬不正数億円か 静和病院捜索   2010年京都府知事選挙への折り返しにあたって 民主府政の会がアピール   日本医療教授システム学会が初のフォーラム   日本医師会事業計画   [第1回] 大ベストセラー『チームバチスタの栄光』作者は現役医師   ジンバブエ:医療崩壊の危機 独裁政権のしわ寄せ拡大   諮問会議「帳尻合わせの議論のみ」―日医常任理事   著者インタビュー『地域とともに産み・育み・看とる』を編著者の1人、牛渡君江さんに聞く   ご近所のお医者さん:/24 「末期医療に生涯を」=清谷知郎院長 /高知   社保病院維持求める   療養病床協会が自民に要望   東西南北:看護の道への第一歩 /福岡   平成20年度診療報酬改定の概要を説明   医療事故、立ち入り権限「調査委」案 届け出対象は限定   日医・唐沢会長が所信表明   5分ルール「小児科の壊滅必至」   西播磨救急医療研究会:野口・愛知医科大教授が講演 /兵庫   阪南市の医療崩壊進行、大阪の「南北格差」も背景に   医療関係者が深刻な危機を訴える上映会   米大統領選、ITワーカーが支持する候補は?   ノーブレス オブリュージュ   「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して─2」をテーマに   増える患者らの暴力 3割の医療者が身体的暴力受ける / 広島   巨大な力による故意の医療破壊   後期高齢者医療撤回を   バイタルサイン・検査データからみる救急初期診療   「医療・介護再生プラン」など確認   街角ファイル:「シッコ」上映会 /奈良   「医療崩壊させぬ」 8日に山口で公開講座   読売新聞記者 医療の特別講座   メドベージェフ・プーチンのロシア:番外編・識者に聞く/3   来るべきWeb3.0の世界   アメリカの生保業界のための医療改革   世界一の医療費抑制策のための手段と化す「国民負担率」抑制論の罠 (HNN taisukeさんコラム)   [未来予想図]  医療費抑制で医療崩壊 「海外」の医療崩壊   医療制度崩壊の元凶 最先端医療の普及に追いつかぬ国庫負担 (高村薫)   中立性や対象など論点多い   日本の医療保険をアメリカの巨大企業に売り渡す流れ   16名の受賞者を表彰   「市民の協力が必要」救急患者拒否問題で学習会 姫路   今月の「夕張希望の杜」(2007年12月)   医療関連の話題を分かりやすく解説してくれる オススメのブログ4選   「医療崩壊」がテーマ 15日、福山で本田宏氏が講演   日本医療「崩壊」から「立国」へ   開業医の再診料、下げず…与党、日医に配慮   自己負担は先進国最高   勤務医対策に1500億円 08年度診療報酬改定   絵を描くことが手術トレーニング 加藤流「図脳」を伝える一冊   2008年はおだやかな年になるのか,それともまた事件の連続?   社会保障会議 消費税率が議論の中心テーマだ(1月31日付・読売社説)   日本の医療を守る希望の光 兵庫県立柏原病院の小児科を守る会   [解説]C型肝炎感染200万人   或る病院の一生 【2次元と3次元の狭間に佇む腐女子】   「チーム・バチスタ」の本当の敵は~『死因不明社会』   経済のゆがみ・医療崩壊 打開へ   高齢者の医療〝狭き門〟に!?   教育荒廃と医療崩壊の共通点から考えられるそれらの解決法とは?(天夜叉日記)   「08年改定は医療危機を深刻化」   あまりにも目に余る厚労省の情報操作  「再診料引き下げは第一線医療を崩壊」   医療崩壊の現実、高齢化社会を生き延びられるか?   震災13年、変わる災害時医療   「医療費増額が医を荒廃から救う」   電車を勉強部屋にする小学生   社会保障は活力の源「政府は決断を」(新春インタビュー5の3)   「各地で医療崩壊明るみに」(記者座談会07年回顧)   混合診療全面解禁は見送り(07年重大ニュース10の5)   医療のコンビニ化   「健やかな妊娠・出産を考える」をテーマに   「私たちを診てくれるお医者さんがいない」   「地域医療を守る医療費の確保」など5項目を決議   医療崩壊を考える その2