医療格差、東京で病院経営がつらい理由
医師不足で医師が疲弊して次々と病院を辞め、診療科が運営できなくなって病院そのものが閉鎖する「医療崩壊」が全国で現実のものになってきているが、それに追い打ちをかけるように「病院」そのものの倒産が急増している。なかでも状況が厳しいのは、東京都内の病院だ。
http://www.ohmynews.co.jp/news/20080207/20678
「もうあと少しで、軒並み潰れるという状態だ。銀行から見れば、病院というのは融資対象として最低ランクらしい」
「精神科は経営状態が良い方と言われるが、減価償却費を削って帳簿上クロにしているのが実情。銀行からはすでに貸し渋られる状況が出てきている」
3日に都内で開かれた東京都病院学会のシンポジウムでは、病院の窮状を訴える声が相次いだ。
学会テーマは「医療における格差」。格差とは、病院経営者からみた都心と地方の差を指す。教育格差と違い、都心の方が格差の下に位置している。
赤字病院が6割超の東京
青息吐息の病院経営。あなたがかかる病院が潰れる日も……(写真はイメージ) 全日本病院協会は2007年11月、07年度病院経営調査報告で「都内の病院は61%が赤字」というデータを示した。06年度の47%より増加。全国の赤字病院の割合(27%)を大幅に上回っている。
総収支率を見ても、全国平均の103.7%も芳しくないが、都内の病院に到っては98.1%。都内は「平均で赤字」という状態なのだ。
全日病のデータの少し前にも、民間の調査会社・帝国データバンクが病院“倒産”の急増を指摘している。調査を始めた2001年以降、医療機関の倒産件数がもっとも多かったのは2004年の32件だったが、07年は1~5月で28件と、最多ペースで推移。
特に病院の倒産(10件)が顕著で、主因は診療報酬の減少などによる「販売不振」(28.9%)、放漫経営(20.5%)となっている。
病院経営が厳しくなっている最大の理由は、小泉政権下での診療報酬のマイナス改定――つまり収入の減少だ。高齢化に伴う医療費の伸びを抑制するため、国は診療の単価を引き下げた。その結果として、締め付けられた医療現場は文字通り「崩壊」を始めた。来年度は8年ぶりにわずかなプラス改定となるが、産婦人科などに重点配分されるため全体としては“焼け石に水”。景気回復に伴う人件費増もあって、病院の倒産は今後数年、増え続けると見られている。
ちなみに、特別養護老人ホームなどの介護施設は医療機関より厳しい。03年、06年と介護報酬が引き下げられたため、施設は大幅減収となった。介護保険制度が始まったころは不況だったから、安い給料でもヘルパーのなり手がいくらでもいたが、景気が回復した今、ヘルパーたちは、給料の上がらない介護職に見切りを付け、もっと時給が良くてラクできれいな仕事に流れ始めている。
東京と地方の「医療格差」
シンポジウムでは、全日本病院協会の猪口雄二副会長が、東京都内での病院経営がほかより厳しい理由について、
(1)人件費が高く、交通費や住宅手当も高い
(2)地価が高い分、固定資産税が馬鹿にならない
と説明。
現行の地域加算(診療報酬は原則として全国一律だが、東京23区など経費のかかる地域ではそれを加味した金額が上乗せされる。現行では入院1日あたり180円)くらいでは差を埋められないとして、
「東京の病院はアメニティが悪いが、個室料も結構高く、患者さんに我慢、もしくは負担をしてもらっている状態だ。同じ医療費を払っているのに、地方に行けばもっときれいな病院に入れるという医療格差が生まれている」
「国は医療費は伸ばせないというが、少子・高齢化が進む中で、増える医療費・介護費をどう支えるというのか。国民に対して、『わが国は医療費はもうかけられませんので、そこそこの医療で我慢してください』ときちんとアナウンスしなければ、問題は解決しないのではないか」
と訴えた。
フロアからも、
「携帯電話代は月に1万以上も払い、ゲームも持っている患者が、病院では治療費未払いということをやる。国民は、生活の基本的な部分にお金を使わなくなっているのではないか」
「診療報酬を上げると国民の負担も上がることになり、喜ばれないが、そこは医療者が率先して、患者に対して説明すべき点だと思う」
など、医療者として国民に理解を求める必要性を指摘する意見が出ていた。
◇
同じ病院で1000万円超の差
東京警察病院経営企画課の藤原寿さんが2007年に行った研究によると、「民間の100床以上の病院」をモデルケースとして都道府県ごとの病院収支を試算した場合、入院患者用の食費、人件費、固定資産税、減価償却費などすべて合わせた収支で、大分県では毎月529万円の黒字、東京都内では毎月611万円の赤字という差が生まれる。
常勤医師1人あたりの職員給がもっとも高いのは岩手県で139万円(2位:鹿児島県、3位:埼玉県)。最も低いのは大分県で57万円(2位:香川県、3位東京都)。同様に、常勤看護師の職員給は、福島県が33万円と最も高く、鹿児島県が23万円と最も低い(いずれも所定内賃金)。
病院の経営努力による差、とばかりはいえない格差の実態がうかがえる数字だ。
(藤原寿「都道府県別の病院収支試算研究」2007年)
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